東京モーターショーに最終日に行ってきた。驚くほどに人が少ない。
連日オープン時間などは長蛇の列があったみたいだけど、最終日のクローズの時間にガラガラな様子はちょっと危機感さえ感じた。
複数のメーカーで「自動運転のある未来」を描いている。「自動運転があれば、駐車場を探して勝手に駐車する」とか「周辺の景色の良い場所へ連れて行ってくれる」とか。
これらは「運転を嫌う層への訴求」である。
運転技術的な面もあれば、煩わしさもある。「運転は避けたいけれど、クルマは必要」という日本に一番多いと思われる層へのアピール。
でも、この層って極端な話をしてしまえば、クルマならなんでも良いんだよね。快適にスムーズに確実に目的地まで運んでくれるクルマこそ最高のクルマなのだよ。
0-100km/hが何秒だとか、馬力がどうだとか、更に極端な話をしてしまえば環境性能や燃費なんかも関係ない。
タクシーは他者の介入が煩わしいし、あくまでプライベートで移動できるモビリティであり、快適さを持ち合わせていて、クルマのある生活は好きなのだから。
だから、モーターショーに来ない。来る必要は無い。
そもそも、特別なクルマの知識を持とうという意識が無いどころか、出来る限り何も考えずに便利だけ手に入れたいのだから。
一方で「クルマを嗜好品として好き」な層は物足りない。
運転が楽しいクルマを求める人間が、自動運転のクルマを選ぶことは無い。もしカーシェアで必要な時に自宅前まで自動で配車されて、自動で移動し、目的地では勝手に駐車場を探して駐車してくれるクルマがあれば、いくらクルマが好きだと言っても、日常ではこちらを選ぶはず。運転を楽しむクルマは別に持つだろう。
結果として、ドレスアップだったり、チューニングだったり、そうした嗜好品としての楽しみを向上させてくれる情報は盛り上がる。オートサロンが盛り上がっているのは、そこにポイントを絞っているから。
誰も彼も、オートサロンに並ぶクルマの様な過激な変化を求めているのではなく、ナンバーのボルト1本を変えるところから需要がある。そんな情報さえ、TMSには無く、TASに集中するのだよ。
クルマ離れは自動車メーカーが作り上げていると感じる。
現在「クルマなら快適で便利で安全ならなんでも良いよ」って層が自動車を所有している人の大半と考えると、その層がクルマ業界を支えているっていう、クルマ好きには苦笑いで眺める構図も浮かび上がる。
全自動運転のカーシェアが実用化されれば、「あの地域には◯◯ブランドらしいよ」「あのアプリの配車サービスは最新モデルが導入されるらしいよ」と話題があがるかもしれないけれど、それは現在の「タクシー会社に採用される車種がどうでも良い」って程度の話になるんだと思う。
そこに危機感を持って旗を振り回しまくってるのがトヨタの社長なんじゃないかな。
「道具」と割り切る層が支えている事実を認識しつつ、「嗜好品」としての商品や文化を盛り上げて2つの柱を強化していこうと。
後者は確実に儲かる層ではないけれど、差別化やクルマ企業が生き残る意味を作る上で、とても大切な内容を掴んでる。
全自動ロボットを作ろうとするメーカーが居るなかで、チューニングのブランドを持つメーカーの存在意義が明確になる。
トヨタに対するGRMNやTOMS、日産に対するニスモ、BMWに対するMパフォーマンス、メルセデスに対するAMGなどなど。
その中でも、更に社外にオフィシャルの存在としてチューニングメーカーを置くBMWはその文化を一番強化出来ていると思う。
日本でも一番売れてるブランド(MINIも含む)となれば、様々なユーザーが居るのも事実。ただ、その一部がチューニングやドレスアップの文化を成長させていると思う中で、その割合は他メーカーのそれよりも多いと思う。
さぁ、ここからクルマ業界面白くなりますよ。
いろいろな意味で立ち位置が明確になっていく(ならざるをえない)から、統合もあれば、独立もあるだろうし、街で動き回るモビリティのカタチも大きく変化することだろうね。
20171106
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